2022年08月の一冊

2022年08月の一冊

ぼくたちの緑の星

童心社(外部サイトにリンクします)

小手鞠るい

ぼくたちの緑の星

ぼくが小学生のころ、自分の名前を失いかけていた。大切にしていたものも、大好きなものも、友だちも失いかけていた。みんなが「ゼンタイ・モクヒョウ」に向かって「ジュウゾク」させられていた。ぼくのお父さんもそうだった。

そんなとき、ぼくは一枚の紙きれをひろう。よく見ると、それは地図だった。地図のうらには数字とアルファベットが組み合わされた長い番号が書かれていた。その番号は、みんながもっているパーソナル番号だった。ぼくは、お父さんがゆずってくれた古い機械のアンモナイトくんにこの番号を入力して、地図の持ち主と交信してみた。

この小さな出会いが、ぼくに、失いかけていた大切なものを取り戻すきっかけを与えてくれた。ぼくの名前、大切にしていたもの、大好きなもの、友だち、そしてお父さん。最後に、ぼくは大切な仲間たちと平和な星へと旅立つ。その平和な星とはいったいどんな星なのだろうか……。

この本は、大切なものを守るために何ができるかを考えさせられる少年少女向けのSF小説です。主人公のぼくは、物語を通じて、少しずつ忘れかけていた記憶をゆっくりと思い出していきます。音楽教室にあったピアノ、ピアノが奏でる音楽、近くの公園、公園のあすなろの木、大切な友だち、図書館の本……。どれも日常の断片に過ぎないものだけれど、ひろった地図の持ち主との交流を通して少しずつ思い出を掘り起こし、最後に大きな決断をします。私は、この本を通して、出会いの大切さについて学ぶことができたような気がしました。

忙しい毎日を過ごしていると、いろいろなことを忘れてしまうものです。でも、小さな出会いで”なにか”や”だれか”のことを思い出したり、自分自身を取り戻したり、迷っていた気持ちに決着をつけることができたりすることもあります。そんなちょっとした出会いの物語を読んでみたいという方、ぜひ手に取ってみてください。

 

対象:小学3年生~

一覧に戻る
絵本と子どもたち いっしょに本をひらこう!