寒い朝、図書館に入るとまるで新たな世界の入り口に立つように…エレベーターの扉がミアの目の前で開く。14歳のミアが下りたその先で出会ったのは、カネコフミコの自伝だった。二人に共通する貧困問題、虐待、親との関わり…ミアは同級生の誰よりもフミコを近くに感じ、自分の未来を占うかのように本から目が離せなくなる。
学校では自分の重い現実を誰にも話せない。そんな折、同級生のウィルはミアが書いたリリック(歌詞)に目を見張る。そこには、自分では決して書くことのできない「本物(リアル)」の表現があった。ラップのリリックを書いてほしいと頼むウィル。ミアのリリックが必要だと言ってくれるウィルの存在はミアを新たな世界に導く…。
ミアに最初の扉を与えた場所が「図書館」だったこと。
そう、図書館にはたくさんの扉が用意されている。
私に、スマホを観ることより、本を読むことを優先させた1冊でもある。
〈その他著者話題作〉
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(新潮社)