富山県の魚津に蜃気楼を見に行った「私」は帰りの汽車の中で一人の男と出会う。
一見40歳前後にみえるが、顔にはたくさんのしわがあり60歳ぐらいにも思える不気味な男で、なぜか絵のようなものを窓の外に向けて立てかけていた。
その絵を見せてもらったところ、白髪の老人と美しい娘が描かれているとても精巧な押絵細工で、さらに渡された双眼鏡で絵を見ると、二人は本当に生きているようだった。
困惑している私に、男は世にも奇妙な物語を話しはじめた。
男には兄がいたのだが、ある時、双眼鏡をのぞいていて偶然見かけた美しい娘に一目で恋をしたという。もう一度会いたいと探したところ、なんと娘は覗きからくりの中にいる「八百屋お七」の押絵だった。
どうしても娘と会いたい兄は、突然、双眼鏡を逆さにして大きなレンズの方から自分を見てくれという。しかたなく逆さから兄をのぞいてみると…。
原作の江戸川乱歩は、作品を読んだことはなくても名前を聞いたことはあるかと思います。
推理小説で有名な作者の奇妙で不思議な作品を大きな絵本で味わってみてください。