2022年01月の一冊

2022年01月の一冊

ペーパーボーイ

岩波書店(外部サイトにリンクします)

ヴィンス・ヴォーター/作 原田 勝/訳

ペーパーボーイ

1959年、メンフィス。両親と住み込みの黒人家政婦マームと共に暮らす11歳の”ぼく”は、夏休みの間、友人の代わりに新聞配達をすることになった。

しかし、最大の難関は新聞の集金。なぜなら”ぼく”は、吃音症という問題を抱えているからだ。すぐにどもってしまうせいで、人と話すのは緊張する。

新聞配達を通して、いろいろな問題に直面しながらも、なんとか乗り越えていく”ぼく”だったが、その先には思いもよらぬ事件が待っていて・・・。

 

吃音という悩みを抱える少年が主人公ゆえ、その苦悩について詳しく描かれているが、それだけに留まらない。1950年代に色濃く残っていた黒人差別、年上の女性への憧憬、友情など、様々な要素が盛り込まれていて、読み応えのある作品。

そして、少年を取り巻く登場人物がとても魅力的だ。どんな時も優しく見守る黒人家政婦のマーム、聡明で心に響く言葉をかけてくれるスピロおじいさん。

「大切なのはなにを言うかで、どう言うかじゃない」というスピロおじいさんの言葉が印象的。

作者の自叙伝的作品ということだが、こんな素晴らしい大人に出会えた作者は幸せな少年時代を送ったことだろう。

この作品を読んで、自分もこんな大人でいたいと強く思わされた。

 

中学生くらいから、どの世代にも読んで欲しいおすすめの一冊。

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