2024年05月の一冊

2024年05月の一冊

真実の口

講談社(外部サイトにリンクします)

いとうみく/著

真実の口

昨年の五反田図書館は、ティーンズの書架に力を入れ、<ティーンズボランティアの棚>や<今週のpickup>など、新しい棚を作りました。今年は、児童書架でも作家ごとに紹介する<おすすめの本>の特集展示をあらたに行っています。今月は、私の大好きな作家のひとり、いとうみくさんの展示をやっていて、意外と好評です。そこで、こちらでもティーンズ向けの新刊、『真実の口』をご紹介しようと思います。

 

この物語は、ある中学生の3人(青山湊、七海未央、周東律希)が、迷子の4歳の女の子(ありす)を警察に連れていくところからストーリーがはじまります。3人は、「適切な判断と思いやりある対応」をした学生として警察から感謝状をもらうのです。

それからしばらくして、高校生になった3人は再会します。親による子どもの虐待事件のニュースを見た七海が、あのときのありすは虐待を受けていたのではないかと言い出したのです。実はほかのふたりも思い当たる節がありました。自分たちはよかれと思ってありすを警察に連れていったが、本当は自分たちの行動はまちがっていたのではないかと疑いはじめるのです。こうして三人はありすを探しはじめる…という内容です。

 

いとうみくさんといえば、社会問題などをテーマに、児童書から一般書まで、さまざまな作品を描いています。この本も、虐待、正義というとてもむずかしいテーマを扱っていて、実にいろいろなことを考えてしまいました。ただ、いとうみくさん流のやさしさで物語は終わります。しんどいテーマではありますが、悲しいラストではないのでご安心ください。

 

最後に、自分がだれかのためにと思ってやったことが、実は迷惑行為だったとしたら…。そのことに気づいたとき、みなさんはどうされますか?

一覧に戻る
絵本と子どもたち いっしょに本をひらこう!